若州良民伝とは…
安永九年(1862)に発行された全四巻からなる書。
若狭地方で領主が領民の中の六十余人の善行を記録したものである。
若州良民伝 巻二より
~松宮綱右衛門の妻かめ~
小浜の普請奉行、
並河(なびか)久左衛門の部下であった足軽の
松宮綱右衛門という者と妻かめは義父と共に上竹原に住んでいました。
義父は大工を職としていて毎日普請方役所へ出勤します。
その時かめは未明から湯茶、朝食の準備に余念無く、
竹原口、郭門(かくもん=村の口の門)まで送り、
義父が帰る頃になると作事小屋の水道橋に迎えに出て、
朝持ち出た食べ物の器などを受け取り、
竹原口までは共に帰りますが、そこからは足早に先に帰り、
湯を沸かせ父の手足を洗う準備をします。
義父は毎夜酒をたしなむので酒の準備も怠ることは無く、
就寝の準備も欠かせたことはありません。
嫁がそうするので息子の綱右衛門もまたよく父に仕えました。
このことが郡長にも聞こえ宝暦元年、
米若干を下賜しその孝を褒めたたえました。
若狭文学会会員 松井正
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