苦悩する神 その四
若狭神宮寺は、神仏習合に関連して、二番目に古い文献に現れる寺です。
文献の内容は、神の身を離れて仏法に帰依したいというものです。
ここでは少し、神とは何かということを考察してみたいと思います。
日本には八百万の神があると言います。
一方我々は、根本的な神として天照大神を考えます。
天照大神は、伊勢神宮の祭神です。
大国主命を祭神とするのが、出雲大社です。
両者の関係は、主従ではないと思われます。
ならば、神はそれぞれに存在してもよいのではないでしょうか。
原始宗教の起源説には、次の諸相があげられます。
①アニミズム
②プレアニミズム
③アニマティズム
④ナチュリズム
⑤トーテミズム
⑥一神教
⑦シャーマニズムなどです。
この中で注目したいのが、トーテミズムです。
同一名の者同志が同族として集団を作り、名称を持つ。
この名称をトーテムと言います。
そしてこのトーテムは、人間の禍福を支配する呪力を持つとされます。
神的な存在です。そのため、儀礼が生み出されました。
これをトーテミズムと言います。
若狭神宮寺を建立した和朝臣宅繼の曽祖赤麿は、
若狭比古神の直孫として文献(『類従国史後編』)に現れます。
赤麿は、「此の地、是我が住処」といい、
この地域に住む者たちの中心的存在であることを匂わせています。
ここから推理して、地域ごとに祖先が神として存在したと思われます。
天照大神は、天皇家の神であったと言うことです。
若狭文学会会員 鈴木 治