酒井伊織家下屋敷跡
小浜市役所東側の道路を隔てた一角に佇む、 黒い板塀に見越しの松、
歴史を感じる門構えと剣酢漿紋 (けんかたばみもん)入りの瓦で葺かれた屋根。
伝えられるところによると、ここは小浜藩主酒井忠勝公の弟
酒井内匠助忠末(後に酒井伊織家として筆頭家老となった)の下屋敷跡です。
現在の建物は明治になって建替えられていますが、躯体は当時のままです。
床の間は欅の一枚板、床柱は黄金に輝くもみじの木や天然しぼり丸太、
床鴨居からは刀の波紋のような模様が浮き出ており、いかにも家老の屋敷らしい
重厚で美しい雰囲気を醸し出しています。
藩主忠勝公は、家光、家綱二代の将軍から厚い信頼を受け、
江戸で老中、大老として将軍を補佐する重責を担いながら、
国許の小浜には酒井伊織家を頂点として、三浦家、深栖家、小原家など
信頼出来る家老や城代、老中をおいて頻繁に指令書を送り、
藩政を導いたと言われています。
明治四年の廃藩置県で小浜藩がなくなるまでの二三〇年余りの間、
家老たちは藩の存続と繁栄に大きく寄与してきました。
江戸時代の武家屋敷をほとんど目にする事がなくなった小浜市内において、
当時の面影を残す貴重な建物です。
小浜市郷土研究会会員 網本恒治郎
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