若州良民伝とは…
安永九年(1862)に発行された全四巻からなる書。
若狭地方で領主が領民の中の六十余人の善行を記録したものである。
若州良民伝 巻一より ~玉川屋八左右衛門~
越前敦賀十間町の坊長(名主・庄屋の異称)に玉川屋八左右衛門という
律儀にして義を好む男がいました。町内の貧しい者が地子銀(小作料など
の年貢)を収められない時はおのれの財で助けてやることがたびたびあり
ました。
元文の年、海路が長期間荒れ商船の入港することが途絶えたので港の
商いはすたれ、大いに苦しむ者が続出しました。八左右衛門に救いを求め
る者が押しかけたので、彼は富豪より金銀を借りて救ってやりました。皆、
八左右衛門の義に涙を流して感謝しました。
八左右衛門が病気になり坊長を辞めたいと言ったときは、もうもうわんさ
と人が押し寄せ、家中、人々の泣き声で一杯になりました。こんなに人に
慕われる男はついぞ見たことない、と人々は語り合いました。
若狭文学会会員 松井正
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