若州産のオウレンについて
公立小浜病院の中庭に「中川淳庵を顕彰する薬草園」が開園しました。
小浜藩医であった彼は、朝鮮ニンジンの栽培技術を確立した
幕府医官・田村灌水に師事して本草学を学び、
宝暦七年(一七五七)に初めて開かれた薬品会(ヤクヒンエ 物産会)以来、
毎年三~六種の薬物を出品しています。
中でも明和三年(一七六六)には「黄連(オウレン)」を出品していますが、
わざわざ「若州産」と記録されていますので、
恐らく国許の小浜から江戸に取り寄せたものと思われます。
生薬「黄連」は、オウレン類の根茎を乾燥したもので、
古来より消炎、止血、精神不安などの要薬として漢方処方に配合されるほか、
胃腸薬の原料として幅広く用いられています。
本州中部以西に分布するセリバオウレン、
山陰以北の日本海側には「一回三出複葉」でキクの葉に似たキクバオウレンが分布し、
根茎は同様に薬用として利用できます。
両者の違いは葉の分裂程度が異なるだけですから、
淳庵が国許から入手したものがセリバであったのか、
キクバであったのかを明白にして、正しい方を薬草園に植栽したいと考えています。
これまで小浜近郊のエンゼルラインに両種の混在が確認できましたので、
さらに高浜寄りの地区での自生情報が必要です。
郷土の偉人を顕彰するため、
地元の皆さんから情報が寄せられることを熱望しています。
小浜病院薬草園管理アドバイザー 渡辺 斉