山に登る
二十年ほど前の四十五歳の頃から山登りをしています。
そのきっかけは友人が「今の内に体を鍛えておかないといかんですよ」という言葉でした。
その甲斐あってか六十を過ぎた今日も大病することなく生活できることを勿体なく思っています。
山登りの利点は次のようです。
一、日常生活に変化を起こす。
二、地図を見たり、天気予報に気を止めるようになる。
三、充実感とささやかな感動がある。
四、感動を備忘として書き留める。
以上の四項目に要約できます。一言でいうならば老後に向かったリハビリをしているということになりそうです。
目的の山を定め、登山口までの道のりを地図で確かめさらに登山道を確認する。
出立前日は登山用具の点検、食料品の調達、着替えの整理等々日常にはない慌ただしさと緊張感があります。
そうして一泊から四泊の登山を終えて自坊に帰るとすぐに登山記を書き始めます。書かないではおられないからです。
その理由は定かではありませんが、ともあれ登山中の感慨を書き留めるのです。
三日から四日後には登山記が出来上がり、これで一つの山登りは終わりを告げます。
ささやかながらも山に登って感動を覚える。そうして自ずから文章が生まれる。
これは山登りをして得た大きな収穫でした。
絵・文 円照寺住職 村上 宗博
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